A Dose of Rock'n'Roll

いろんな国の映画について書いています。それから音楽、たまに本、それとヨーロッパのこと。

リンゴ・スター&オールスターバンド@ベルリン

なんと我らがリンゴ・スターが今週から来日するようですね!

 

こちらも→ RINGO STARR And His All Starr Band - ウドー音楽事務所

 

いやーうらやましいなあ。日本公演、未だに見たことないんですよね…行かれる方はがっつり楽しんできてください&少しでもリンゴ&オールスターバンドの知名度が高まりますように!

 

今回はそんなわけで私が長年愛してやまないオールスターバンドの紹介をほんのりしながら、去年行った(のに全然書いてなかった)ベルリン公演について書こうと思います。

 

◼︎ リンゴの来日

リンゴはオールスターバンドを始めた(それまで活動が停滞してアル中になっていたのでカムバックと言われました)のが1989年で、その年に早くも来日しており、さらにメンバーを入れ替えた第3期、95年に再来日。しかし、そこからは日本にとんと縁がなくようやく2013年に久々の来日が実現したのでした。

→リンク: JASHさんによるポールのサイトの特設ページが詳しいです。ちなみにこのサイト、20年以上更新されている素晴らしいファンサイトです。メインのポールに関するコンテンツが充実しており、個人サイト全盛期だった中学生のころから私も見ています。こういう個人サイト、情報の”速度”という点では大手がSNSで発信するものにもちろんかかないませんが、私は今でもとても重要だと思うんですけどね。

 

その後は16年、そして今年とコンスタントに来日してくれるようになっています。オールスターズのツアーは基本的にリンゴが現在住んでいるアメリカのみのことが多く、この頻度で訪れている日本は世界的に見ればかなりラッキーな国ではあります(アジアでは16年ツアー時に初めて韓国公演が実現)。

 

うーん、どちらの年も日本公演、見たかったな〜こちらも長年のファンのトッド・ラングレンを拝みたかった。。

どこで仲良くなったのかトッドは92年の第2期オールスターズ参加以降、リンゴのスタジオアルバムにもよく参加しています。

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ご尊顔出典

◼︎ リンゴ&オールスターについて

いやはやこのオールスターバンドなんですが、これについて語り出すときりがないしそもそも30周年を迎えるメンバーを紹介するだけでも膨大な情報量になってしまうのですが、前情報としてちょっとだけ紹介。

  • 89年に開始。ビートルズ解散後長いこと自分がメインアクトのステージやツアーから遠ざかっていたリンゴが「俺だけ主役で2時間もたないよ…」と思い仲間のミュージシャンに声をかけたのが始まり。
  • そもそもリンゴはソロキャリアのほとんどのアルバムで豪華なゲストミュージシャンを迎えることで知られており、その縁を活かしたまさに彼にしかできない”With A Little Help From My Friends”だったというわけ。
  • 合言葉は”What's my name!?”—「RINGO!!!!」(この掛け合い、日本公演行く人は覚えといてください)。
  • 正式名称は微妙な表記揺れもあるものの、基本的にRingo Starr & His All-Star Band。間に何期かを示す"5th"とかメンバーを一新した際に"New"とかが入る。この記事では基本的にオールスターズと書きます。
  • ”オールスター”というだけあって、バンドのメンバーは全員が華々しいキャリアを持った一流ミュージシャン。一流といってもいわゆるスタジオミュージシャンではないので、リンゴ以外にも全員が持ち歌を歌う。そしてその曲が全てヒット曲!というやけに豪華なステージは大当たり。2019年に30周年を迎えるリンゴにとっての一世一代の活動になったのでした。
  • メンバーの例を挙げると、ジョー・ウォルシュやティモシー・B・シュミット(イーグルス)、ジャック・ブルース(クリーム)やサイモン・カーク(フリー)、グレック・レイク(EL&P)のような60/70sロックのレジェンドのようなメンバーからシーラ・Eのような80年代に活躍したリンゴから見れば若手まで幅広い。
  • メンバーはツアーごとに変わるのが恒例で、何年かマイナーチェンジだけだと思っていたらガラリと総入れ替えになることも。最初の3回はかなりビッグバンドだったものの、最近ではちょっとスリムになったイメージ。詳しくはWikiで全部確認できますが、今年のは第14期とのこと。現在のメンバーはギターのステーヴ・ルカサー(TOTO)を核にしたものといってよく、12年以降7年目に突入したことになる。

 

30周年ツアーということで、リンゴもお祝いしています。いい写真だなあ…気合いバッチリ!

◼︎ 私とリンゴ&オールスターズ

そんなリンゴ&オールスターズなんですが、私にとっては本当にロックの教科書で…。リンゴのソロにも手を出していた高校生のころにそれまでの集大成『Anthology ...so far』がリリースされ、入手。3枚組のボリュームに詰め込まれた名手たちのオリジナルに触れることで60/70sロックの名盤をすごい勢いで開拓することができました。まさに自分のロックを一気に拡げてくれた恩人なのです(そこで出会ったクリームのジャックブルースに影響されてベースを弾き始めたのはまた別のお話…)

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Jack Bruce, One of Rock & Roll’s Modern Architects, 1943-2014 – Rolling Stone

 

なのに!そう、なのに!これまでずーっとライブに行けていなかったのです。先に触れたようにリンゴは13年から定期的に来日するようになったんですが、まさに13年から私はドイツに住むようになり、残念ながら来日公演の情報を海の向こうで悶絶しながら見守ったりTwitterで拡散したりしていたのです(いやこれはポールも同じなんですけどね)。不謹慎な話ですが、真面目に「生きてる間に見れるのか」心配する日々を送っていたところ2018年ついにヨーロッパツアーが実現したのです!

 

The Anthology...So Far (Live)

The Anthology...So Far (Live)

  • Ringo Starr & His All Starr Band
  • Rock
  • USD 15.99

なんか地味な扱いな感もあるけど(リンゴのアルバム全部そうとは言わせない)、これは何気にすんごいライブアルバムですよ。ピーターフランプトンがソロ引き倒してジャックブルースとバトルを繰り広げるSunshine of Your Loveが聴かれるんだから………(それ以外にもありすぎて書けない)。真面目な話、こんなお買い得なアルバム、なかなかありません。HMVではもうなかったですが、Amazonでは今でも新品が買えるようです。たったの2500円!! 

◼︎ 2018年ベルリン公演

さて、そんなわけでやっと本題!2018年6月16日に行われたベルリン公演に行ってきたわけです。セットリストはこちら

会場とか

会場はこんな感じ。Tempodrom。結構小さめの会場が多い中、それでも大きい方…?Wikiによれば収容人数は3,800人だそうです。ちなみにエリック・クラプトンの今年6月のライブはメルセデス・ベンツ・アリーナというスタジアムで開催予定。収容人数は17,000人とのことでした…!

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中の様子

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開場前のステージ

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大都会ベルリンですがヴィリー・ブラント・ハウスの近く、割とアクセス良い場所にありました。駅を降りてからもリンゴのRの字も見かけずちょっとだけ不安になりました(元ビートルなんだからもっと宣伝すれば良いのに…)。のんびり会場に向かって楽しみにしてた物販を探したんですが、ない!! いや、ドイツのコンサートではこういうこと、ままあるんです。日本だとチケット代だけじゃなくて物販でも予想外に持っていかれるのにね……と思っていたら帰りに超小規模のコーナーを見つけました。とりあえず最新アルバムエコバッグ(?)をゲット。

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パンフが欲しかった……とあきらめきれず、帰途に立ち寄ったレストランでビールを飲みながらebayで………注文してしまいました(笑)

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パンフ自体は発行していたようで、よかったです。それにしてもUKから買ってしまうとは…。

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2018年ツアー

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そんな2018年ツアーのメンバーは以下の通り(ウドーのサイトから抜粋、改変)

  • スティーヴ・ルカサー (TOTO) - G./Vo.
  • グレッグ・ローリー (サンタナ、ジャーニー) - Key./Vo.
  • コリン・ヘイ (メン・アット・ワーク) - G./Vo.
  • グレアム・グールドマン (10cc) - B./Vo.
  • ウォーレン・ハム (カンサス) - Sax/Perc.
  • グレッグ・ビソネット (デイヴ・リー・ロス) - Dr.

基本的にメンバーは前年までの顔ぶれと変わっておらず、唯一の交代がベースのグレアム・グールドマン。10ccでの活躍だけでなく、ホリーズの"Bus Stop"などの名曲の作者としても知られています。

 

さっきも書きましたがヨーロッパツアー自体がなかなか久しぶりで、結論としてはウィーンとかルクセンブルクとか、行ける限りは複数回行っておけばよかったな〜とあとで後悔しました。

ドイツ以外はパリやローマといった大都市だったものの、ドイツではZwickauという異様に地味な街を回っていておや?という感じでした。プロモーターの都合とか力関係とかもあるんでしょうが、リンゴ自身もあんまり大きいハコではやりたくないのかもしれません。ちなみにヨーロッパ各都市を回る間にイスラエルにも飛んでいて、初の公演を開催しています。

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私が参加した日は前後のアメリカチェコなどの公演と比べると若干曲数が少なかったようです。他の公演ではリンゴは"Anthem"を取り上げていて、これもちょっと聴いてみたかったかもしれません。『Ringo 2012』というビートルズでのデビューから50周年でつくったアルバムからの曲ですが、正直にいえば「なんでこれ…?」という気はします。

それにしても意外だったのが最新作Give More Love』からは1曲もやらなかったこと。見落としているかもしれないのですがツアー通して他の公演でもやっていないようです。これも……なんで?特に冒頭の"We're On The Road Again"はツアーメンバーでもあるスティーヴ・ルカサーのギターが冴え渡るすばらしいロックチューンで、非常にライブ映えするトラックだったので確実にお披露目されるものと思っていました。2019年ツアーに期待しましょう!

いやしかし、ポールもベースとシャウトで参加していますが、本当にここ数作の中でも会心の出来栄えです。

www.youtube.com

前座とオーディエンス

それにしても、ちょっとネガティブだったのが前座、それからオーディエンス。

前座はオープニングアクトと書くべきなのでしょうが、今回のはちょっとミスマッチで。。詳しく書いても仕方ないので割愛しますが、リンゴの音楽性とどの辺が被るの?というバンドで、自分語りのMCも含めつつ30分以上続いて会場からもヤジが飛ぶという雰囲気の悪さ。。どちらにとってもあんまりなステージだったので、残念でしたね。。

前座で初めて知り好きになったバンドもあるので、私は前座自体を完全に否定する気はないのですが、こういうの見るとやはり考えものですね、、、業界の習慣というところもあるだろうし…。

あと、本編が始まってからもあまりガラの良くない(ビール飲みながらサッカーにヤジを飛ばすような)オーディエンスがいて、リンゴも一度”俺がしゃべってるんだけど!?”とコメントしたりしていて、なんていうか、リンゴに申し訳ない気持ちになってしまいました。。翌日のTwitterが他に比べて素っ気なかったのももしや……?なんていう邪推も、、、。 

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総評

え、なんでこれもっと早く見とけなかったの!?

というのが感想でございます。

リンゴ率いるオールスターズの演奏はとにかくエネルギッシュで意外なほどフレッシュなエネルギーに溢れたもので、それでいてロックの楽しいショーとしての側面も存分に楽しめる、というまさにリンゴ・スターの半世紀を超す芸風が詰まりに詰まったものだったのです!!!!!!

もう!いくつ付けても足りません。この世代のロックレジェンドのステージとは完全に一線を画すものでした。。。嘘だろ、こんなにも元気なステージを仕切ってるのが70代後半だなんて……と目を丸くしながら一緒に歌い、踊った2時間でした。楽しかった。。(私の隣にリンゴと同世代?ぐらいの老夫婦が座っていらっしゃったのですが2時間超微動だにせず、たまにおばあさんが私のはしゃぎようを丸い目で見られていました…)

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本編の感想

リンゴは年相応の疲れはあったようですが、よくジャンプするし一切ブレない独特のMC、そしてドラミング。繰り返しますが、こんな格好良い70代、世界にも数人しかいませんからね。

元祖ロックドラマーとしての彼のプレイの記名性には今更触れる必要はありませんが、それにしてもほぼ出ずっぱりでリンゴがこんなにも叩くとは知りませんでした。なのでほとんどの曲はツインドラムでお届けというゴージャスさ。 

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Konzert ohne The Beatles: So war es mit Ringo Starr im Tempodrom | Berliner Zeitung

 

実は、必ず会場で大合唱するイエロー・サブマリン、能天気すぎて(リンゴのソロ諸作の良さを知ってる身だけに)録音ではめったに聴く気になれないんですが、会場で合唱すると楽しいのなんの。いやこれもう当たり前ですね。あー日本公演行きたい。間違って福岡までのチケット買ってしまって物販でも無駄にお金使いたい。

 

そして、そうこの男。

 

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スティーヴ・ルカサー!!

自身ももちろんスーパーギタリストなんですが、彼の楽しそうなこと楽しそうなこと。ステージを縦横無尽に駆け巡りながらテクニックを尽くし弾き倒す弾き倒す。ロックはね、ギターなんですよ。ギターキッズなんですよ。。。彼とグレッグ・ローリーの鍵盤による掛け合いが本公演のハイライトだったと言っても過言ではありません。そして、そんな彼を現在のライブ/スタジオでのパートナーにしているリンゴ、すばらしいセンスだ!!

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Ringo Starr no pudo recordar inicio de canción en Lima | RPP Noticias

めくるめく鍵盤の魔術でとにかく酔わせてくれたグレッグ・ローリー。うん、でもなんでそんなにスティーヴ・ルカサーと顔が似てるんだ?(笑)

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Gregg Bissonette - DRUMMERWORLD

全体的にHRにラテンを加えたテイストの人選なんですが、その屋台骨を支えるドラマーもまたイカす人選です。グレッグ・ビソネット。ソリッドに刻みながら見せるドラマーとしてのパワフルなプレイとパフォーマンス、加えて特にサンタナのトラックで顕著になるラテンの妖しさ騒がしさの演出の巧さ。

リンゴと一緒に叩いていても手加減せずにとにかく気持ち良さそうなところも最高でした。帰ってYouTubeで彼のソロの動画リピートしました。 

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Gregg Bissonette

サックスとパーカス、コーラスをオールスターズで長年担ってきたマーク・リヴェラが13年以降抜けてしまったのでちょっと残念に思っていたんですが、後任は別のベクトルでまた印象的でした。サックスはもちろんのこと、特にコーラスおよびメインのボーカルでの高音の貢献が大。40代ぐらいかと思ったらもう60なのになんであんな高くて伸びるんだ。。TOTOの"Rosanne"での歌唱は忘れられません(とりわけ大ヒット曲なので会場も大盛り上がり)。

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Warren Ham – Theo Wanne

 

あとはもともと期待していた2人。オールスターズの2003年ライブ盤で知り、以来Men At Workを折に触れて聴いてきたので(そしてそもそもこの2003年盤はリリースから長らく愛聴しているので)、コリン・ヘイは今回のメンツの中で一番楽しみにしていたアクトかもしれません。

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変わらない、あのちょっとぶっきらぼうな声で"Who Can It Be Now?"が聴けたときは泣くかと思いました。いや、泣かずに歌い踊りましたけどね?

ギターでは圧倒的にリードのルカサーが常人離れしたプレイヤーなのであまり目立ちませんでしたが、Boysなんかでロックンロールらしいソロをとっててそこも何気に嬉しかったです。

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それから、グレアム・グールドマン。10ccはもちろんのこと、60年代にソングライターとして活躍してたときの作品が好きで意外にも自分の音楽史の中で大事な人だったりします。そんな彼がオールスターズの(リンゴ以外の)曲を"Dreadlock Holiday"で始めたのはガツンと来ました。なんだか"I don't like cricket!"と叫んだところで「あーオールスターズのライブ始まったんだなー」という気になったのでした。

欲をいえば10cc以外の曲、"No Milk Today"とかやってくれればなあ〜。

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2018 – Ringo Starr in Berlin | The songs they were singing …



 

 

いやはや、、、、、書きすぎた

自分でも1年近く前のネタでこんなに長文を書けるとは思ってもみませんでした…(苦笑)。 f:id:coroand501:20190326083055j:plain

うーーん、それにしてもこうやって振り返ると本当、楽しかったというのと必ずもう一度行きたいという思いで胸が熱くなります。

もう一度書きますが、よくある懐古的なものとは違って、確かに曲はそうなのかもしれませんが大人がガチでロックを繰り広げている、そういうライブでした。

日本公演のライブレポなんかも、読むの楽しみですね。

 

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(スティーヴ・ルカサー公式サイトより)

 

リンゴとオールスターズ関連はまだまだ書ききれないことがたくさんあるので、また今度記事にできればと思っています。それでは! 

Peace & Love !