A Dose of Rock'n'Roll

いろんな国の映画について書いています。それから音楽、たまに本、それとヨーロッパのこと。

ターコイズの空の下で(2019)

みなさま、あけましておめでとうございます!

 

もう年が明けて3週間近く経ってしまったのですが(苦笑)、今年も当ブログをどうぞよろしくお願いします。

去年、2019年は一応当初の目標としていた数の記事はかけたのですが……まぁ、月1本書いただけっていう(笑)。今年はもうちょっと書きたいなと思っている今日この頃ですが、無理せず好きなことをのんびり綴っていく予定です。

 

まぁ、のんびりしていた結果として、マンハイム映画祭の話題で年を越してしまったのですが……、今日はそんな映画祭で「Talent Award」を受賞した作品"Under the Turquoise Sky"についてです。

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ターコイズの空の下で : 作品情報 - 映画.com 

柳楽優弥、合作映画「ターコイズの空の下で」に主演! 共演はモンゴルのスーパースター : 映画ニュース - 映画.com

 

 

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日本の作品(正確にはモンゴル・フランスとの合作)がオープニング作品に選ばれたというのでどんなものかと期待したのですが、結果は! 私がこの映画祭で見た作品の中でも一番良かったです。

 

お話としては、大企業の社長の孫として放蕩にふける主人公(柳楽優弥)が、終戦後モンゴルで抑留生活を送っていた祖父が残した娘を単身探しに出かける、というもの。祖父が娘探しを依頼するきっかけとなったモンゴル人の青年(アムラ・バルジンヤム)が相棒となってポンコツの車で旅をします。

 

こう書くと、いかにも「放蕩息子が悪態をつきながらトラブルに遭い続けて逆境から成長する」、ちょっとありがちな青春ロードムービー、という感じがしてしまうと思います。
まぁ、半分は正解です。モンゴルの大地にジャケット一枚で放り出されるわけで(東京とまったく同じ格好で来てしまうので 笑)、相棒がいい加減なために一人で彷徨って狼に襲われたり病気になったりもします。

ただ、この映画の本当におもしろいところは、主人公が全然悪態をつかないこと。モンゴルのすばらしい自然には素直に感動するし、モンゴル人との酒宴にも意外とノリノリで踊る。妊婦が産気づいたときには必死に心配するし、生命の誕生には素直に感動する。

私は個人的に、こういう姿がすごく等身大の「現代っ子」という感じがしました。やんちゃな若者が旅を通じて成長する物語って、えてしてひねくれ者だったり粗暴だったりするんですよね。でも、本作はそういった面をことさら強調するのではなく、新鮮に物事をとらえて吸収できる「素直さ」が若者の大いなる良さであることを謳っているようで、とても清々しかったです(もちろん若者って一括りにはできませんけどね)

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そして、その「素直さ」がモンゴルの雄大な自然を表現するのにぴったりなのです。
映画祭だったので冒頭で司会者による短い紹介があったのですが、「モンゴルへの旅へようこそ」というのはこの作品に関してはまったく的確な言葉でした。

一応ちゃんとした人間のドラマがありながらも、それよりもモンゴルの美しい自然がより大きな個性になっていることが、この作品の一番の特徴と言えるかもしれません。映画の登場人物と同じように広野で寝泊りしながら撮影したということですが、監督自身の自然への感動がこれもまた素直に表現されているようで、とても好感を持ちました(映画祭に登壇されたKENTARO監督自身は都会的な印象で、自然派なイメージでは全然なかったのですが!)

そんなモンゴル平原と同じように、各シークエンスもあっけらかんとしていて、どこかユーモラス。それなのにフランス語で会話しながらレストランで食事するシーンなど、予想外なシーンが織り込まれていて観ていて飽きない作品でした。

 

また、役者陣もすごい。主演の柳楽優弥は言うまでもなく(こちらのインタビュー、すごく良いです)、相棒役のアムラ・バルジンヤム*1もモンゴルを代表する映画人。
さらに主人公の祖父の麿赤兒も冒頭から登場して強烈なインパクトを残していました。(ちなみに、先に書いた狼に襲われて抜け出すシーンは暗闇でバイクを燃やして対峙するという非常に印象的なものなのですが、私はここに暗黒舞踏へのオマージュを感じました。)

 

本作は今年日本でも公開されるようなので、多くの人にお勧めしたいなと思っております!

 


おまけ:

映画祭では監督だけでなく、柳楽優弥さんも登壇されていました(監督「スターなので同じところに上がるの、緊張してます」とのこと)。私もこんな有名人をドイツで見れるのはなかなかないな、と思って写真を(感想とともに)Twitterに上げたのですが、柳楽優弥さん応援botに引用され、そこから自分史上最多の拡散がされ「SNSって……すごい!!」となりました(笑)

そんな写真。

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*1:名前は日本語の情報ではこう紹介されていますが、WikipediaIMDbではBaljinnyamyn Amarsaikhanとありました。日本語への書き下しが違う気がしますが…知識不足でわかりません。。どなたかご存知であれば教えてください!