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A Dose of Rock'n'Roll

いろんな国の映画について書いています。それから音楽、たまに本、それとヨーロッパのこと。

オーバーハウゼン国際短編映画祭で観てきました その2

続きです。
 
インターナショナルコンペティション部門 第5回
 
 
Cipka, Renata Gąsiorowska, Poland, 2015, 8'22"
 
ポーランドの女性監督のアニメーション作品で、タイトルはずばり”Pussy”。女性のオナニーについてコミカルに描いた作品でかなり笑いをとれていた。女性器が飛び出していってという発想が面白いし、全体的に温かみのある描き方でよかった。
 
Centre of the Cyclone, Heather Trawick, Canada/USA, 2015, 18'20"

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一緒に行った友人と妻、全員から不評だった作品。上映前の監督の謎の自信とは裏腹に、前半は荒涼たる自然、そして後半は60年代風のサイケな映像で壊れた車の大会(?)を写す。今の時代にそういった感じの映像を撮ることには賛否あるだろうが、まぁテーマは一切伝わってこなかったよね。長いし。
 
Tristezas, Paz Encina, Paraguay, 2016, 7'12"
 
国を出て久しいというパラグアイの女性監督によるかなり政治的な作品。草むら(畑?)を兵士が横切るスローモーションの映像を背景に、一聴してそれとわかる軍人の扇情的なスピーチ、それに続いてある男の2種類の電話での会話が重ねられる。一つは母親に無事を告げるもの、もう一つは恋人か友人に対して「何もせずに引き下がることはできない」という、正反対のメッセージ。相手の音声は再生されず一方的なスピーチで、起承転結があるわけでもなんでもないのだが、戦争によって一人の男の人生が捻じ曲げられていることがよくわかる秀作だった。タイトルは、スペイン語で「悲しみ」の意。
 
Adaptacja, Bartosz Kruhlik, Poland, 2016, 22'36"
 
今回の映画祭中最も良かったのが本作。ポーランドの作家による、ある家族に起こった悲しみ、そして苦しみを描いている。兄が運転する車で弟が亡くなった直後から映画は始まっている。母はただ亡くなった弟を恋しがり、父は兄を憎む。そうした状況で自分が大切にされていないという感覚を募らせる主人公。彼が最後に走りついた色とりどりの光に包まれた場所はどこだったのか。暗示的なラストを含め、22分ながらも物語のある映画としてきちんと完成されていた。ぜひ長編も撮ってほしい。カンヌの”ある視点”とかに出品されてそう。
 
 
Omokagetayuta, Ohtakara Hitomi, Japan, 2016, 9'24"

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面影たゆた、という東京芸大の学生が制作した作品。母に対する気持ちをお餅のようなものに象徴させて、彼女の思い出をセンスとテンポのいい映像で綴る。最後には衝撃的な事実が明かされるのだが、これは彼女の実体験なのだろう。見始めたときには少しエモーショナルにすぎる、と感じたものの、最後まで見ると意味がわかった。逆に、そうした大きな悲しみを乗り越えるためにこの作品を作ったのだとすれば、それがこんなに整理された美しい作品として昇華されたのかと思い、心打たれた。
 
Robijnrood, Manon de Sutter, Belgium, 2015, 6'07"
 
凍った鳥が焼かれるというどうも暗示的なシーンに道の下で泳いでいるシーンなどがオーバーラップする。映像の感覚としては良かったのだが、短編映画としてはちょっと意味が…。
 
Snö, Richard Dinter, Sweden, 2015, 10'
 
「雪」というタイトルだけに、映像はひたすら車窓からの雪道。基本的にはそれは背景に過ぎず、幼い頃に体験したという不思議な物語の「語り」がメイン。語りだけだと10分は長く感じたが、ちょっとNHKの童話の読み聞かせみたいなものを思い出し、懐かしくてよかった。