A Dose of Rock'n'Roll

いろんな国の映画について書いています。それから音楽、たまに本、それとヨーロッパのこと。

悪党に粛清を(2014)

原題: The Salvation
制作: 2014年 デンマーク・イギリス・南アフリカ合作
監督: クリスチャン・レブリング
出演: マッツ・ミケルセン、エヴァ・グリーン、ミカエル・パーシュブラント、ジェフリー・ディーン・モーガン
 

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デンマークから兄弟で開拓時代のアメリカに移民してきた男の物語。移民後7年経って妻子を祖国から呼び寄せたものの到着したその日に通りすがりの悪党に殺されてしまう(悲しすぎる…)。
実行犯の悪党はとりあえず射殺したものの、問題はそいつの兄貴。元兵士だが今は街の用心棒という名目で住民を支配しているヤクザみたいな悪党だったのだ。そしてマッツ・ミケルセン演じるジョンの復讐が始まる…。
 
!!! 以下、ネタバレを含みます !!!
 

 

 
うーむ、、、イマイチだった…orz
 
最初は「兄貴が実は真っ黒で裏で糸引いてるとか?だから最後には兄弟の愛憎劇になるなんて…深い…!」と勝手に推測していたのですが、あにはからんや超どストレートな復讐劇でした(兄貴は最終的に弟のために悪党に殺されてしまうというめちゃくちゃナイスガイだった…疑ってすまない)。
Yes!粛清!
今どき珍しい割と硬派な西部劇だったと言えるのではないでしょうか(先住民と戦ってるわけではないが)。
 
  • 最初の(私の妄想の中の)兄貴像

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  • 最終的な兄貴像

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(ロック界でも最高の兄貴の一人、エディ・ヴァン・ヘイレンさん)
 
 
セットや衣装は西部劇として細部まで作り込まれていたと思うし、多用されないけど音楽も渋くて◎。なのになのに、結局観た後に「…で…?」という感想しか抱けない残念な作品でした。マッツ・ミケルセン好きなのに(そして劇場でもすごく宣伝してたと記憶してるのに)本当に残念。
 

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(マッツは悪くない)
 
これはなんでなの?と考えてみたところ、最大のポイントはキャラの描きこみが足りないというところだと思いました。
各々のキャラ自体はすごく個性豊かなんですよ(そしてキャストも豪華)。デンマークから渡ってきた元兵士という兄弟(兄貴役のミカエル・バーシュブラントも渋くて最高…!)、先住民との争いで舌を切られ口がきけなくなってしまった悪党側のプリンス、悪党におばあさんを殺された少年、そして肝心の大悪党も開拓時には兵士として活躍したが今では完全に住民を食い物にするヤクザ、というちょっと屈折した設定を持っている。
しかし!それらが全然リアリティをもって迫ってきてくれないんですよ。。。
 
フィクションへののめり込みって、いかにそこで作られてる世界観に共感できるかによると思うんですよ。で、その世界観って多くの場合人物の描きこみによっています。細部まで描きこんで作り上げることで人物像に深みが出てきて、立体的になったキャラクターが生き生きと躍動し始める。まぁ、基本と言えば基本の文法なんですが、それがこの映画にはあんまり感じられませんでした。あくまで個人的にはですが。
 
例えば、
  • 最初に妻子を殺されちゃう主人公、元兵士なのに弱腰すぎでしょ(「やめろと言っているんだ」じゃないよ…)。後半で見せつける強さ、ここですでに使っとこ…?
  • 劇を通じて”プリンセス”と呼ばれ続ける口のきけないヒロイン、エヴァ・グリーンの存在感もすごいし非常に興味深い設定なのに、活躍なさすぎでしょ。過去についても触れられないし…。それで最後なぜか主人公と一緒に旅立っちゃうの、やっぱり腑に落ちないんですが…。
というツッコミがどうしても出てきちゃって、この作品の世界からふと覚めちゃうんですよね…。
 
それからマッツさんの私服にm

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(ところで、誰だっけ…?と思いながら見てたら、これはあのエリック・カントナ…!この映画、オススメです)

 

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eiga.com

 
最後に、もうひとつ書いておきたいのは「復讐劇」なのにイマイチピンとこなかった理由。実は、この作品、マッツ演じる主人公の「復讐」だけではなく、悪党にとっても弟を殺された「復讐」ということになっています。さらには今までの生活も不本意だったらしい姫の「復讐」でもあったり。
しかし!残念ながらそれらが重層的に絡み合ってないんですよ。なんかお互いがお互いの理屈を並べて終わり、みたいな。ここで悪党が悪党に至るに至った(変な言葉ですが)屈折した心情をじっくり描いてくれでもしたら、それぞれの暴力が結局は不毛で解決にはならないんだよ、みたいなメッセージになって一応まとまった気がするのですが…。んー、消化不良
 
という、今日はなんだか原題(”Salvation=救済”)に反して全然救われなかった映画を紹介してみました。。
 
 
最後はさっぱりとマッツさんのイケメン度でも再確認してから終わろう
 
 
 
 
 
 
 
かなと思ったのですが、躍動という言葉を登場させてしまいどうしてもこの人が頭から離れませんでした。おわり。