A Dose of Rock'n'Roll

いろんな国の映画について書いています。それから音楽、たまに本、それとヨーロッパのこと。

ジョーカー(2019)

話題の『ジョーカー』を観てきたので、その感想です。

 

f:id:coroand501:20191104082457j:plain

ジョーカー : 作品情報 - 映画.com

 

バットマン映画がベネチア…?とかニュース時点では思っていたものの、鑑賞後にはそんな疑問は100%吹き飛んだ。かなり陰惨な話ではあるが、ギラギラ光るような魅力がある。有名な悪役の誕生譚という形を借りながら1人の男のゆがんだ自意識をこれでもかと描き出す、掛け値なしの力作だ。

 

ただ、これは非常に危険な映画なのではないか。

 

というのが私の正直な感想だった。以下、この部分について書いていく。

 

!!! (ないとは思いますが)ネタバレがあるかもしれません !!!

続きを読む

ありふれた事件(1992)

なんと不快な映画なのだろう。いや、このひと言に尽きる。不快な映画は数あれど、大して有名でもないベルギー製の本作、堂々のトップ10入り有力作だ。

 

f:id:coroand501:20191007052636j:plain

ありふれた事件 : 作品情報 - 映画.com

ありふれた事件 公式サイト

 

モノクロ、フランス語の本作は”殺人に関するドキュメンタリー”の形式をとっている。いわゆる、モキュメンタリーだ。

冒頭、電車内の映像が映し出されたと思ったら何の脈絡もなく最初の「殺人」が始まる。あっけにとられて見ていると、犯人と思われる男のインタビュー映像に切り替わる。あまりに唐突な始まりだったので観客としては動機を求めるところではあるが、男が語り出すのは「隠し方」。曰く「体重に対しての重しのつけ方が難しく、換算表がいるくらいだ」。ここで観客は不穏なものを早くも感じ出すのである。というのも、あまりにも男があっけらかんとしており、どこか愉快な感じさえあるからだ。

この映画をどう見れば良いのか……?考える暇を与えずドキュメンタリーは早くも轟音とともに銃を使った犯罪を淡々と捉えていくことになる。

 

こうして次から次へと罪のない人々が殺されていく様子が90分続く映画といって良い。あまりに衝撃だった。殺人鬼についてドキュメンタリー風の演出で迫った映画は少ないわけではない。例えば、(これもカルト映画ではあるが)実在の連続殺人犯に題材を取る『ヘンリー』は本作と対比しうるものかもしれない。ただ、決定的に違うのは『ありえふれた事件』は「心の闇」に入り込んでいくものではないところだ。むしろ、詩のようなものを口にしノリで人を殺しまくるブノワの姿からは、「その奥には何もない」ことだけが強烈なメッセージとして発せられる。

悲惨な事件が起こると人々はその裏に潜むものを積極的に理解しようとする。合理的な理由を得て安心したいからだ。だから、この映画の持つメッセージは文字通り「目を背けたい」ものとなる。人を殺す側には周囲が少しでも共感したりできるようなものは、「何一つない」のだ。(そして、そのメッセージには「あなたの近くで起こっている(原題”C’est arrivé près de chez vous”)」というタイトルがつけられている)

同じくドキュメンタリータッチで殺人者を描くキェシロフスキー監督の『殺人に関する短いフィルム』も思い出した。しかし、ここでも対照的に『殺人に関する〜』にあったモラル的な問いは見られない。皆無だ。つまり、モラルに挑戦するような意図で撮られた作品でもないということ。ここでまた「合理的な説明など見つからない」空虚さに座りの悪さを感じることになる。

 

冒頭に述べたことを再度書くが、不快な映画だった。

容赦ない暴力描写も多々あるが、ホラー映画のような怖さではなく、ダイレクトな表現による嘔吐感の方が感想としては正しいだろう。そう、これほどまでに不快なのは「身近な事件」を実際に見ている感覚に陥るためで、そういう意味での演出・編集は完璧だったと言って良い。手持ちカメラの映像、トラブルがあると途切れる音声、製作者側(3人の製作チームも”出演”している)にも伝染していく狂気、そして突然の終幕に向かう意外でスリリングな展開、モキュメンタリーとして求められる要素の全てがある。ある意味では憎いほどパーフェクトな映画で、ヒットはしないとしてもこれまであまり語られてこなかったことには驚きを隠せなかった。

 

しかし、高品質がゆえ鑑賞後に頭を抱えることにもなる。一体これは何を意味しているのか。そんな折にちらと目に入る映画のタイトルには「ありふれた事件」と書かれていた。

オーディション(1999)

先日、長年探していた三池崇史監督の『オーディション』をようやく観ることができました。日本にいたときはなぜか流通が少なく、未見作品の中古VHSを高値で買うほどでもなかったので、興味を持ってからもう10年以上観れずにいたのでした。
調べてみたら最近はAmazonでも配信されてるし、DVDも割と普通に手に入りそうですね。変わったもんだ…(良い時代になったのかどうかは…知りません笑)

 

そんな本作、海外ではなかなか有名な作品で、数々の「もっとも怖いホラー」ランキングの上位や”邦画では唯一”に選ばれています。ロッテルダム映画祭での上映では観客が「悪魔!」と出席した監督に詰め寄ったというエピソードも残しています(Wikipediaより)。

 

f:id:coroand501:20190731074246j:plain

AUDITION オーディション : 作品情報 - 映画.com

(このドイツのDVDパッケージが好きなのでこちらを上げときます。公開時のポスターや日本盤DVDは結構テイスト違います)

 

!! 以下、あらすじに加えてネタバレも含んでいます !!

続きを読む

ヘレディタリー/継承(2018)

去年公開されて絶賛されていたホラー映画、ヘレディタリーを観ました。

 

f:id:coroand501:20190630195147j:plain

ヘレディタリー 継承 : 作品情報 - 映画.com

 

!!! 以下、ネタバレてます !!!

 

 

そう、とにかく「怖い」という前評判だったので、「へぇ〜どんなもんかねえ」と半信半疑で観てみたものの………。

続きを読む

浮草(1959)

先日京マチ子さんが亡くなったというニュースに接し、追悼上映というわけではないですが何本か見直しておりました。
いや、特に思い入れがあるわけではないのですが、やはり『羅生門』『地獄門』をはじめとした時代劇における”コケティッシュなお姫様”というのが私の印象でした。でもよく考えたら現代劇を観たことないなーと思い、それはもうなんとなく観た『浮草』があまりにも刺さったので今日は少しそのお話を(文中、敬称略)

f:id:coroand501:20190527072002j:plain

浮草 : 作品情報 - 映画.com

 

(※ 以下、ネタバレしてるかもしれません…念のため)

 

  • あらすじ
  • 作品評
  • 付記①
  • 付記②
続きを読む

Give More Love / Ringo Starr (2017)

現在来日中のリンゴですが、前回のオールスターバンドに続いて、最新アルバムについても少し書いておこうと思います。

 

『Give More Love』Ringo Starr (2017, UMe)

f:id:coroand501:20190401083729j:plain

Produced by Ringo Starr

Wikipedia

Billbord

公式ストア

 

  • 総評
  • 最高のオープニングから飽きさせない展開
  • 個々の曲とゲストについて
    • その他のゲスト
    • Re-Do 

 

総評

2017年9月にリリースされたリンゴにとって通算19枚目のスタジオアルバムである。最初に結論から書くと、ここ10年の彼の作品の中でもっとも充実した仕上がりではないかと思っている。

そう書くと、ちょっとそれまでの作品、具体的にいえば名プロデューサーマーク・ハドソンから製作途中に離れた『Liverpool 8』以後何枚も駄作を作っていたように聞こえるのだが、そうではない。『L8』を含めてなんと5枚もあるそれらの作品も、聴きどころはあった。ひと言でいえば、リンゴがやりたいことをやってるところ。これまでプロデューサーの色に染まることを基本としてきた彼が、キャリアの中で一番1人でアルバムを作っている”感じ”があるのがこの10年だったのだ。

 

HDレコーディングという技術の進歩によるところもあるだろうが、それだけではないだろう。共同プロデューサーとしてもクレジットされているブルース・シュガーはハドソン以降のスタジオワークでのパートナーといえそうだが、しかし彼の役割はこれまでのリンゴの作品における”プロデューサー”とはかなり違ったもののように思われる。これが意味することは、アーティスト自身がやりたいことを見つけたらそれを具現化できるようになったということ(全キャリアを聴いてきたファンとしてあえて言っておくと、そもそもやりたいことがなかったのにアルバムを作っていた時期もあっただろう)。

一体、元ビートルズという一流ミュージシャンを前にして何をいうか、という話であるが、90年代後半まで他の楽器はおろか作曲もそれほどしてこなかった彼である。実はこれって、彼のミュージシャンとしての進化が還暦をとうにすぎてもまだまだ続いてるという驚くべきことを示しているのだ。

続きを読む

リンゴ・スター&オールスターバンド@ベルリン

なんと我らがリンゴ・スターが今週から来日するようですね!

 

こちらも→ RINGO STARR And His All Starr Band - ウドー音楽事務所

 

いやーうらやましいなあ。日本公演、未だに見たことないんですよね…行かれる方はがっつり楽しんできてください&少しでもリンゴ&オールスターバンドの知名度が高まりますように!

 

今回はそんなわけで私が長年愛してやまないオールスターバンドの紹介をほんのりしながら、去年行った(のに全然書いてなかった)ベルリン公演について書こうと思います。

 

  • ◼︎ リンゴの来日
  • ◼︎ リンゴ&オールスターについて
  • ◼︎ 私とリンゴ&オールスターズ
  • ◼︎ 2018年ベルリン公演
    • 会場とか
    • 2018年ツアー
    • 前座とオーディエンス
    • 総評
    • 本編の感想

◼︎ リンゴの来日

リンゴはオールスターバンドを始めた(それまで活動が停滞してアル中になっていたのでカムバックと言われました)のが1989年で、その年に早くも来日しており、さらにメンバーを入れ替えた第3期、95年に再来日。しかし、そこからは日本にとんと縁がなくようやく2013年に久々の来日が実現したのでした。

→リンク: JASHさんによるポールのサイトの特設ページが詳しいです。ちなみにこのサイト、20年以上更新されている素晴らしいファンサイトです。メインのポールに関するコンテンツが充実しており、個人サイト全盛期だった中学生のころから私も見ています。こういう個人サイト、情報の”速度”という点では大手がSNSで発信するものにもちろんかかないませんが、私は今でもとても重要だと思うんですけどね。

 

その後は16年、そして今年とコンスタントに来日してくれるようになっています。オールスターズのツアーは基本的にリンゴが現在住んでいるアメリカのみのことが多く、この頻度で訪れている日本は世界的に見ればかなりラッキーな国ではあります(アジアでは16年ツアー時に初めて韓国公演が実現)。

 

うーん、どちらの年も日本公演、見たかったな〜こちらも長年のファンのトッド・ラングレンを拝みたかった。。

どこで仲良くなったのかトッドは92年の第2期オールスターズ参加以降、リンゴのスタジオアルバムにもよく参加しています。

f:id:coroand501:20190325080921j:plain

ご尊顔出典

続きを読む