A Dose of Rock'n'Roll

いろんな国の映画について書いています。それから音楽、たまに本、それとヨーロッパのこと。

2019年の映画たち

本当はこういうの、年末とか年明けに書くものなんでしょうけども……いやもう1月終わりそうになってしまいました。あけまして(ryって言いそうになったし(笑)。

でも負けじと毎年恒例的なものなので去年の映画も振り返っておこうと思います!

 

ちなみに去年は結構たくさん映画を観ており、新旧合わせて144本でした。新しいのは3分の1ぐらいですかね。そんな感じで。

 

 


印象に残った新作/近作

※ 毎年のことなんですが、2019年公開のものだけではなく、鑑賞時で(日本あるいはヨーロッパでの)公開から1年以内という基準で「新作」と呼んでいます。

 

『Kirschblüten & Dämonen(桜の花と悪霊たち、の意)

私が大好きな2008年のドイツ映画、『HANAMI』の続編がなんと公開されたのでした。ドリス・デリエ監督作品ってどこか影のあるところがまた良いのですが、今回は結構全編にわたってダーク。オリジナルを影の方に引き延ばした、という印象で、もとの作品が好きな人にはちょっと辛いかもしれない。監督作品としての記名性は健在で1本の映画としても十分観れるものなのですが(日本文化もたっぷり!入月絢さん主演!樹木希林さんも出演!!)、好き嫌いで言うと私はそれなりでした。『HANAMI』の方が断然。

っていうか、今見たらなんと8月に早くも日本公開になっていたんですね。知らなかった。でも、『HANAMI』の続編ってことは触れられてない……これを機にドリスデリエ監督最高傑作と信じてやまないこれのソフト化をぜひ……!

オフィシャルサイト

 

『女王陛下のお気に入り』

好きな監督作品といえばこのひと、ヨルゴス・ランティモス。『籠の中の乙女』以来大好きなひとりなのですが、前年の『聖なる鹿殺し』に続いて新作が公開されて嬉しかったのです。

今回は意外にも(ほぼ)密室での女3人の愛憎劇というテーマ。監督らしからぬ?と思いつつ観ましたが、最初から最後まで引き込まれっぱなしの佳作でした。昼ドラ一歩手前のドロッドロのお話を早すぎず遅すぎず絶妙なテンポで描き切ります。ドラマに終始すると思いきや監督らしいショッキングな演出も盛り込んで、ラストまで本当に飽きない映画でした。


『ヘレディティ』

ここ2〜3年で観たホラーの中で一番好きだった!

『ミッドソマー』

そして続編が早くも公開されるという僥倖!

 

『残穢』

ホラーといえば、ちょいと古いのですがこれ。上記2作品とはまったくテイストが違うものなのですが、すごく好きでした。日本らしい、と言ってしまうと『リング』に連なるジャパニーズホラー、となってしまいそうなのですが、それらとは少し違う、実録物。いわば2ちゃんねるの”洒落怖”の名作を読んでるような、じとっとする怖さが良かったです。

 

『ゼット・ブル』

打って変わってのコメディではこれ。スプラッタコメディとでもいうべき系統なんですが、「エナジードリンクを飲んだら脳がプルプルになって凶暴化する」というアホな設定で、企業内で容赦なく殺し合いをしていくのが最高に爽快です。よくある会社内での部門ごとのステレオタイプを描写して、それが即”殺し”につながるのがいちいち笑えました(女性ばかりで井戸端会議をする総務部、明らかに体育会系ばっかりが集まる営業部、意識高い会議をやりたがるマーケティング部、何かと細かい経理部etc…)。

この手の作品ではB級ホラーの↓が最高なんですが、どちらもヒューマントラストシネマ渋谷の名物企画「未体験ゾーンの映画たち」で上映されています。あっぱれテアトルシネマグループ!(いまでも帰国時にたまに行ってます)

 

『ビッチ・ホリデイ』

ちなみにこれも日本では同じ企画で上映されたもの。欧州でも色んな映画祭に出品されていました。イケイケな女性がトラブルに遭うような軽めの映画かと思って観たらさにあらず。劇中BGMはほとんどなく、主人公らの感情も掴めないままギャングの愛人である女性のやや狂った”休暇”が淡々と映し出されます。予想外なテイストで、私はなかなか好きな作品でした。

 

『ともしび』

予想外なテイストといえばやはりこちら。劇場フライヤーの感じからシャーロット・ランプリングが老いをほろ苦く、でも優しく表現する……みたいな映画かと思ったのですが、全然優しくありませんでした。説明のほとんどない、ハネケを彷彿とさせる映画です。

老いを描いていることは間違い無いのですが、そこに見えるのは「老い=時間の経過がすべてを解決するわけではない」という容赦ない現実と「老い=そうした現実とあまりに長い間対峙することによるどうしようもない疲弊」。なんてことだ。私は名作だと思いました。

 

 

アメリカの社会問題を取り上げた作品もなかなか良いものがありました。

 

『華氏119』

マイケル・ムーアも老けたなあ、というとの『ボーリング・フォー・コロンバイン』の頃とは批判のテイストが随分変化したのだなあ、という感想。それでも彼の批判精神そのものは健在で現在の状況への大きな不安/警鐘が存分に示されていました。

 

『ブラック・クランズマン』

エンターテインメントとしてあまりにも良く仕上がっているのでメッセージを忘れそうになりますが、最後に誰にでもわかるように問題提起しているスパイク・リー監督はさすが。いや、それにしても面白かった。白人至上主義の秘密結社KKKに黒人が潜入操作をする、というこのアイデアだけですでに面白いのですが、なんとこれが実話だとは。ひょんなことから潜入捜査になっていく流れもテンポ良く、ハマっちゃったらあとはもうハラハラドキドキ。2時間超、一瞬です。ジョン・ディヴィッド・ワシントンは当然ながら、アダム・ドライバーの抑えながらも人間を感じさせる演技はあっぱれでした。

 

『バイス』

こちらもエンターテインメントなのですが、思ったほど”ガンガン”ではなかったのはやはりチェイニー=ベイルがずっとボソボソ喋るからか。

何度見ても驚くクリスチャン・ベイルのなりきりぶり、だけじゃなくて今回は周囲の人物もびっくりするぐらい似せてきてるのでとにかくそれを堪能しましょう(個人的にはサム・ロックウェルのジュニアがたまりませんでした…)。

 

ドイツ映画ではこんな良作がやっていました。

 

『僕たちは希望という名の列車に乗った』

2019年は壁崩壊から30年だったのですが、今からたった30年しか違わないころにはこんなにも窮屈な世界がまだまだあった、ということをわかりやすく示した感動作(ただしこれは壁すらできる前の話ですが…)。

アイヒマンを追え!』でも骨太の演出を見せたラース・クラウメ監督ですが、ここでは派手になりすぎない堅実なつくりでありながらも、青春映画としてのきらめきも忘れずに添えています。若手俳優たちの演技も◎。

それにしてもこんな良い映画なのに邦題どうにかならないものか……原題=書籍と同じ『沈黙する教室』の方がはるかに良いと思うのですが……。

 

『未来を乗り換えた男』

そう、ドイツ映画でいえば、2018年公開のこちらも私は2019年に観ました。ニーナ・ホスとロナルト・ツェアフェルトを再度起用して前作『あの日のように抱きしめて』があまりにもすばらしかったクリスティアン・ペツォルト監督最新作です(なぜ未だに『Yella』が日本でリリースされてないんだ!)。

前作までは同じキャストを固定していましたが、新しい俳優を起用しての新機軸。内容的にもナチスが支配する現代というパラレルワールドの話で、かなり意欲作と言えます。お話としては彼一流の物悲しさが心に残る人間ドラマなのですが、やはり世界観がすごく奇妙で印象に残りました。個人的には(先にも挙げたランティモス監督)『ロブスター』を思い出しました。

 

『希望の灯り』

上記と同じフランツ・ロゴフスキ主演のハートウォーミングムービー。東ドイツの「いま」をテーマにしていて実は裏にすごく重いもの(東ドイツは統一後も結局西と同じだけの利益を享受できておらず、格差は30年経った今でも残り続けている)があるにもかかわらず、なんだろうこの暖かさは。タイトル通り、それでも前を向いて明日を迎えようとする人々の姿は、なんだかアキ・カウリスマキ作品を連想させます。

『ちいさな独裁者』
あと、こちらはドイツでは旧作ですが、日本では新作。またも実話でびっくり!もの。今年多いなあ。素直に面白いですが、なんだか背筋が寒くなる。エンドロールの現代を背景にしたシーンの意味は一体…?

あ、これはなかなか邦題のつけ方秀逸ですね(原題は"Der Hauptmann(大尉)")。

 

『パラサイト』

それからもちろん、これ。ポン・ジュノ監督がアジア人初のパルム・ドールを受賞した作品です。昨年の『万引き家族』に続いて貧困がテーマになっていると話題になりましたが、『万引き家族』とはかなり趣を異にしています。どういうことかというと、本作はブラックユーモアとして最高だということ。観るまではもう少し重い調子だと思っていたのですが(予告編を観てもそんなにコメディ感を煽ってなかったように思います)、実際には大半の部分がかなり笑えます。後半〜ラストこそややしんみりとしたものですが(この結びもまた良いのです)、全然構えずに観にいける映画なので、ぜひたくさん観られて欲しいなあ。


『Portrait of a Lady on Fire』

昨年のカンヌ映画祭で脚本賞とクィアパーム(LGBT映画に贈られる賞)を受賞した作品で、日本ではまだ公開されていません。思わぬ出会いから激しいが叶わぬ恋に落ちる2人の女性の情熱を驚くべき静けさで表現した女性映画。『午後8時の訪問者』以来好きなアデル・エネルを目当てに行ったのですが、私は2019年もっとも素晴らしい映画だと感じました。


『Sag Du Es Mir(英題は"You Tell Me")

これはマンハイム映画祭で。ドイツ版『羅生門』とでも言いたくなる同じ事実を3つの異なる視点から見つめる興味深い作品。映画『羅生門』=「藪の中」と違うのは、そうして見つめた先に一つの真実が徐々に浮かび上がり、映画としてはサスペンス仕立てになっているというところ。日本で公開はされなそうな気がしますが、一件の価値はある作品です。ないと思うけど脚本がすごく良いので他国でリメイクされないかな。

あ、誤解なきようにモノクロでも昔が舞台でも侍ものでもありません(笑)


『ターコイズの空の下で』

映画祭といえばもちろんこれでした!


『ピアッシング』

昔読んでなかなか好きだった村上龍の小説がまさかアメリカで映画化されるだなんて。もとは一般的な世界に得意な人物が登場する話でしたが、映画としては近未来的な異様な世界の印象の方が先に来る感じ。ミア・ワシコウスカが好きなのですが、いつもの小悪魔ぶりを汚れた娼婦にフィットさせるところが本作でもキュート。監督もしかしてニコラス・ウィンディング・レフン好き?


 

 

いやはや、書いたなあ一気に。こんなに書けるならもう少しこまめに今年は記事を上げたいな、と思っています……(笑)。

 

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ターコイズの空の下で(2019)

みなさま、あけましておめでとうございます!

 

もう年が明けて3週間近く経ってしまったのですが(苦笑)、今年も当ブログをどうぞよろしくお願いします。

去年、2019年は一応当初の目標としていた数の記事はかけたのですが……まぁ、月1本書いただけっていう(笑)。今年はもうちょっと書きたいなと思っている今日この頃ですが、無理せず好きなことをのんびり綴っていく予定です。

 

まぁ、のんびりしていた結果として、マンハイム映画祭の話題で年を越してしまったのですが……、今日はそんな映画祭で「Talent Award」を受賞した作品"Under the Turquoise Sky"についてです。

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ターコイズの空の下で : 作品情報 - 映画.com 

柳楽優弥、合作映画「ターコイズの空の下で」に主演! 共演はモンゴルのスーパースター : 映画ニュース - 映画.com

 

 

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日本の作品(正確にはモンゴル・フランスとの合作)がオープニング作品に選ばれたというのでどんなものかと期待したのですが、結果は! 私がこの映画祭で見た作品の中でも一番良かったです。

 

お話としては、大企業の社長の孫として放蕩にふける主人公(柳楽優弥)が、終戦後モンゴルで抑留生活を送っていた祖父が残した娘を単身探しに出かける、というもの。祖父が娘探しを依頼するきっかけとなったモンゴル人の青年(アムラ・バルジンヤム)が相棒となってポンコツの車で旅をします。

 

こう書くと、いかにも「放蕩息子が悪態をつきながらトラブルに遭い続けて逆境から成長する」、ちょっとありがちな青春ロードムービー、という感じがしてしまうと思います。
まぁ、半分は正解です。モンゴルの大地にジャケット一枚で放り出されるわけで(東京とまったく同じ格好で来てしまうので 笑)、相棒がいい加減なために一人で彷徨って狼に襲われたり病気になったりもします。

ただ、この映画の本当におもしろいところは、主人公が全然悪態をつかないこと。モンゴルのすばらしい自然には素直に感動するし、モンゴル人との酒宴にも意外とノリノリで踊る。妊婦が産気づいたときには必死に心配するし、生命の誕生には素直に感動する。

私は個人的に、こういう姿がすごく等身大の「現代っ子」という感じがしました。やんちゃな若者が旅を通じて成長する物語って、えてしてひねくれ者だったり粗暴だったりするんですよね。でも、本作はそういった面をことさら強調するのではなく、新鮮に物事をとらえて吸収できる「素直さ」が若者の大いなる良さであることを謳っているようで、とても清々しかったです(もちろん若者って一括りにはできませんけどね)

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そして、その「素直さ」がモンゴルの雄大な自然を表現するのにぴったりなのです。
映画祭だったので冒頭で司会者による短い紹介があったのですが、「モンゴルへの旅へようこそ」というのはこの作品に関してはまったく的確な言葉でした。

一応ちゃんとした人間のドラマがありながらも、それよりもモンゴルの美しい自然がより大きな個性になっていることが、この作品の一番の特徴と言えるかもしれません。映画の登場人物と同じように広野で寝泊りしながら撮影したということですが、監督自身の自然への感動がこれもまた素直に表現されているようで、とても好感を持ちました(映画祭に登壇されたKENTARO監督自身は都会的な印象で、自然派なイメージでは全然なかったのですが!)

そんなモンゴル平原と同じように、各シークエンスもあっけらかんとしていて、どこかユーモラス。それなのにフランス語で会話しながらレストランで食事するシーンなど、予想外なシーンが織り込まれていて観ていて飽きない作品でした。

 

また、役者陣もすごい。主演の柳楽優弥は言うまでもなく(こちらのインタビュー、すごく良いです)、相棒役のアムラ・バルジンヤム*1もモンゴルを代表する映画人。
さらに主人公の祖父の麿赤兒も冒頭から登場して強烈なインパクトを残していました。(ちなみに、先に書いた狼に襲われて抜け出すシーンは暗闇でバイクを燃やして対峙するという非常に印象的なものなのですが、私はここに暗黒舞踏へのオマージュを感じました。)

 

本作は今年日本でも公開されるようなので、多くの人にお勧めしたいなと思っております!

 


おまけ:

映画祭では監督だけでなく、柳楽優弥さんも登壇されていました(監督「スターなので同じところに上がるの、緊張してます」とのこと)。私もこんな有名人をドイツで見れるのはなかなかないな、と思って写真を(感想とともに)Twitterに上げたのですが、柳楽優弥さん応援botに引用され、そこから自分史上最多の拡散がされ「SNSって……すごい!!」となりました(笑)

そんな写真。

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*1:名前は日本語の情報ではこう紹介されていますが、WikipediaIMDbではBaljinnyamyn Amarsaikhanとありました。日本語への書き下しが違う気がしますが…知識不足でわかりません。。どなたかご存知であれば教えてください!

マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭に行ったこと

10・11月は毎年いろんなところで映画祭が開催されているのですが、今年も行ってきました。

まずは11月14~24日に開催されたマンハイム・ハイデルベルク国際映画祭の話から(タイトルが長い…笑)。

公式サイト(英語) 

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考えてみたらベルリン映画祭以外のドイツの映画祭に行ったのは初めてでした。でも、司会の人によればドイツでは毎年200を超える映画祭が開催されているとのこと。マジか…(確かにWikipediaで確認できるだけでも100を超えている)。

 

そんなマンハイム・ハイデルベルク映画祭は、その名の通りマンハイムとハイデルベルクという2つの都市で同時に開催されます。

プログラムを見たところ、基本的にはどちらの会場でも同じ映画が違うスケジュールでやっていました。電車ですぐなので複数日いくならハシゴするのもありですかね。

私はマンハイムのみに行ったのでハイデルベルクの会場は分かりませんが、どちらかと いえばマンハイムがメインという雰囲気でした(都市の規模によるのかな。圧倒的にハイデルベル クの知名度の方が高いですが)

 

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これが会場。公民館的な施設ですが、普段は演劇なども上演しているようです。

 

あれ、こんな施設で大丈夫なの...とか一瞬不安になりましたが、ものすごくちゃんとした映画館でした。音響などもバッチリ。

ちなみにすぐ下に大手スーパーのReweがあり、深夜まで開いているので遅くまで映画を観たあと にはとても助かりました…!

 

で、私としてはこの映画祭、大満足でした

1952年に始まったとても歴史ある映画祭なのですが、非常にレベルの高い作品が集まっていたという印象。個人の好き嫌いはあれど、どれも高水準でと てもお勧めできる映画祭です。私は来年もぜひ!と思いました。

こちらのページの説明によれば”量より質”とのことですが、出展されている作品数は「それなり」 なので、ビジターとしてはちょうど良いな、と感じました(ベルリナーレはものすごい数の上映が あるのでとにかく選ぶのが大変)。

 

1つ難を挙げるとするなら、賞が分かりにくいこと。よくある「コンペティション」「アウトオブ コンペティション」「ヤングタレント」みたいな括りになっていないので、理解するのに少し時間がかかりました。

最高賞と位置付けられているのは「Grand New Comer Award」。次いで「Talent Award」なのですが、これの違いがイマイチわからなかったのです。あと、「Special Award」というのも あるので、一番目玉はこれなのかと最初思いました(実際は他の賞と重複して授与されることもある賞のようです)。

 

こうした枠組みになっているのも、新人発掘に重きを置いているためで、過去にはヴェンダースやトリアーのデビュー作を扱ったこともあるそうです。

ちなみに、最高賞は観客の投票によって選ばれるというのも特徴といえます。これを含めて、全体的に観客との距離が近い、アットホームな映画祭だと感じました。そうした、手作り感(実際少数のスタッフで運営しているようです)を残しながらも、選ぶ作品のレベルの高さから運営側の熱意が伝わってきて、最後には「すばらしいイベントじゃないか!」という感想になったのでした。

ちなみに、私が観た土曜日の午後~夜の回はどれも満員。上映の少し前から開場するのですが、 階段下まで並ぶ長蛇の列でとてもスタート時間までに着席できず、全体的にどの回も時間押していました(笑)。いや、これを笑って許せるのはひとえにイベントの内容そのものが良かったからです…!

 

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長蛇の列…!

 

さて、そんなマンハイム映画祭ですが、今回は日本・モンゴル合作の作品が「Talent Award」と 国際映画批評家賞を受賞しており、そこからも私にとって非常に印象に残ったイベントでした。私も投票したのですが、自分が良い!と思ったものが受賞すると、やっぱり嬉しいものですね。

そんな映画『Under the Turquoise Sky』については次の記事にまとめます…!

 

 

実はこの記事、今月頭に書いていたのですが投稿しておらず、2019年滑り込みの投稿でさらに来年にまで引っ張るという…みなさま良いお年を…!(笑)

 

 

おまけ

マンハイムの街の写真など。それほど大きな街ではないので、手軽に回れます。

 

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立派な宮殿があります。 

 

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めちゃくちゃでかい給水塔が街のシンボル。

 

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ドイツでは非常に珍しいアルファベットと数字の組み合わせ(通りの名前がない)の住所。

 

ここまで書いといてなんですが、観光もついでに、というのであればハイデルベルクの方が圧倒的にオススメです!(笑)

ミッドサマー(2019)

以前に紹介した(そして絶賛した)『ヘレディタリー』のアリ・アスター監督が早くも新作長編を公開!

というわけで観てきました。

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ミッドサマー : 作品情報 - 映画.com

 

!!! 以下ネタバレを含みます !!!

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ジョーカー(2019)

話題の『ジョーカー』を観てきたので、その感想です。

 

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ジョーカー : 作品情報 - 映画.com

 

バットマン映画がベネチア…?とかニュース時点では思っていたものの、鑑賞後にはそんな疑問は100%吹き飛んだ。かなり陰惨な話ではあるが、ギラギラ光るような魅力がある。有名な悪役の誕生譚という形を借りながら1人の男のゆがんだ自意識をこれでもかと描き出す、掛け値なしの力作だ。

 

ただ、これは非常に危険な映画なのではないか。

 

というのが私の正直な感想だった。以下、この部分について書いていく。

 

!!! (ないとは思いますが)ネタバレがあるかもしれません !!!

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ありふれた事件(1992)

なんと不快な映画なのだろう。いや、このひと言に尽きる。不快な映画は数あれど、大して有名でもないベルギー製の本作、堂々のトップ10入り有力作だ。

 

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ありふれた事件 : 作品情報 - 映画.com

ありふれた事件 公式サイト

 

モノクロ、フランス語の本作は”殺人に関するドキュメンタリー”の形式をとっている。いわゆる、モキュメンタリーだ。

冒頭、電車内の映像が映し出されたと思ったら何の脈絡もなく最初の「殺人」が始まる。あっけにとられて見ていると、犯人と思われる男のインタビュー映像に切り替わる。あまりに唐突な始まりだったので観客としては動機を求めるところではあるが、男が語り出すのは「隠し方」。曰く「体重に対しての重しのつけ方が難しく、換算表がいるくらいだ」。ここで観客は不穏なものを早くも感じ出すのである。というのも、あまりにも男があっけらかんとしており、どこか愉快な感じさえあるからだ。

この映画をどう見れば良いのか……?考える暇を与えずドキュメンタリーは早くも轟音とともに銃を使った犯罪を淡々と捉えていくことになる。

 

こうして次から次へと罪のない人々が殺されていく様子が90分続く映画といって良い。あまりに衝撃だった。殺人鬼についてドキュメンタリー風の演出で迫った映画は少ないわけではない。例えば、(これもカルト映画ではあるが)実在の連続殺人犯に題材を取る『ヘンリー』は本作と対比しうるものかもしれない。ただ、決定的に違うのは『ありえふれた事件』は「心の闇」に入り込んでいくものではないところだ。むしろ、詩のようなものを口にしノリで人を殺しまくるブノワの姿からは、「その奥には何もない」ことだけが強烈なメッセージとして発せられる。

悲惨な事件が起こると人々はその裏に潜むものを積極的に理解しようとする。合理的な理由を得て安心したいからだ。だから、この映画の持つメッセージは文字通り「目を背けたい」ものとなる。人を殺す側には周囲が少しでも共感したりできるようなものは、「何一つない」のだ。(そして、そのメッセージには「あなたの近くで起こっている(原題”C’est arrivé près de chez vous”)」というタイトルがつけられている)

同じくドキュメンタリータッチで殺人者を描くキェシロフスキー監督の『殺人に関する短いフィルム』も思い出した。しかし、ここでも対照的に『殺人に関する〜』にあったモラル的な問いは見られない。皆無だ。つまり、モラルに挑戦するような意図で撮られた作品でもないということ。ここでまた「合理的な説明など見つからない」空虚さに座りの悪さを感じることになる。

 

冒頭に述べたことを再度書くが、不快な映画だった。

容赦ない暴力描写も多々あるが、ホラー映画のような怖さではなく、ダイレクトな表現による嘔吐感の方が感想としては正しいだろう。そう、これほどまでに不快なのは「身近な事件」を実際に見ている感覚に陥るためで、そういう意味での演出・編集は完璧だったと言って良い。手持ちカメラの映像、トラブルがあると途切れる音声、製作者側(3人の製作チームも”出演”している)にも伝染していく狂気、そして突然の終幕に向かう意外でスリリングな展開、モキュメンタリーとして求められる要素の全てがある。ある意味では憎いほどパーフェクトな映画で、ヒットはしないとしてもこれまであまり語られてこなかったことには驚きを隠せなかった。

 

しかし、高品質がゆえ鑑賞後に頭を抱えることにもなる。一体これは何を意味しているのか。そんな折にちらと目に入る映画のタイトルには「ありふれた事件」と書かれていた。

オーディション(1999)

先日、長年探していた三池崇史監督の『オーディション』をようやく観ることができました。日本にいたときはなぜか流通が少なく、未見作品の中古VHSを高値で買うほどでもなかったので、興味を持ってからもう10年以上観れずにいたのでした。
調べてみたら最近はAmazonでも配信されてるし、DVDも割と普通に手に入りそうですね。変わったもんだ…(良い時代になったのかどうかは…知りません笑)

 

そんな本作、海外ではなかなか有名な作品で、数々の「もっとも怖いホラー」ランキングの上位や”邦画では唯一”に選ばれています。ロッテルダム映画祭での上映では観客が「悪魔!」と出席した監督に詰め寄ったというエピソードも残しています(Wikipediaより)。

 

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AUDITION オーディション : 作品情報 - 映画.com

(このドイツのDVDパッケージが好きなのでこちらを上げときます。公開時のポスターや日本盤DVDは結構テイスト違います)

 

!! 以下、あらすじに加えてネタバレも含んでいます !!

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