Happy End (2017)
気がついたら2ヶ月も経ってました。いやはや…今年ももう終わりですね。そんな中、カンヌでパルムドールを受賞した『アムール』より5年ぶりのミヒャエル・ハネケ監督の新作を観てきました!日本ではいつやるんでしょうか。
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なんだろう、不思議な感覚なんだけど、ハネケの映画の進化形であり集大成でもあるような、そんな映画だった。
一定の謎はあるように思ったし、そもそもこれを以って監督が「何を言いたかったのか」をずばり言うのはそんなに簡単じゃないと思う。私個人としても鑑賞後にいろいろ考えたのだが、1つの家族の悲劇、家族の間にある壁、家族なのにどうしようもないほど離れている壁を現代の危機として作家があえて重くとらえてストレートに表現したのではないかな、と。でも、なんかこの解釈は、自信ない。もっと誤解を恐れずにいえば、超初期作品『セブンスコンチネント』の現代版リブート、という解釈もありだと思う(家族の悲劇やコミュニケーションの断絶をテーマにしたという意味で)。
そう、そういう意味ですごく集大成感が、あった。少女(と少女の感情の動き)が主役級であつかわれたこともそうだし、ビデオ(今回はもちろんスマートフォンだ)を通じて家族の断絶、孤独、やり場のない苛立ちを淡々と表現するところもそう。BGMを排した製作、クリアだが冷たさを感じる映像、車中の会話を多用したり、とハネケ映画!というしるしは健在で、なんかそれだけですごく嬉しくなった(実は大ファンです)。
ただ、それを踏まえた上で本作は進化形でもあった。1つがお話としてのわかりやすさ、噛み砕かれかた。劇っぽいというか(本当に喜劇すれすれまでやったと思う)、これまでの作品以上に流れを感じるつくりで「次に何が起こるのか」気になり引き込まれた。実際には彼も多くの”物語”を作ってきたんだが、特に”普通の家族”を扱ったものには退屈さを売りにしているようなところもあり(ファニーゲームやピアニストはテーマが違うのでこれに当たらず)、観客にもう少し歩み寄った作品という意味では新しいといえる。
主演はおなじみイザベル・ユペール。今回はキャリアウーマン役。
個人的には最後の部分を含めて(老人が監督自身を投影している、という陳腐な見方は俺はしたくないが)、この作品から感じたのはハネケの、老い。若いころとは違ったシニカルさ・冷徹さを視点に潜ませながらもそれをよーく斬れる刀でぶった切、、、らないところが円熟ということなのか。
いやしかし今回もミヒャエル・ハネケの名に恥じない(実は予告編観たときはあまりに劇っぽさに駄作なのではと不安だった)高品質、大満足。
※冒頭のフライヤーは→より。Happy End | movie 2017 | Michael Haneke - Cinenews.be
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Cannes 2017 : Isabelle Huppert, Nicole Kidman... les stars de la Croisette
キャストは先にあげたユペールのほかにも『アメリ』のマシュー・カソヴィッツ、意外な出演としてはイギリスの名優、トビー・ジョーンズも。主要な登場人物は全員キャラがたった演技だったんですが、個人的には『神様メール』(邦題どうかと思うが)のローラ・ヴァーリンデンが印象に残りました。あと、子役の
Laura Verlinden speelt Aurelie in ’Le Tout Nouveau Testament’ van Jaco Van Dormael - Cinevox
ベルギーの女優さんです。↓の短編もすごくいい!
死の影 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks
最後に、イザベル・ユペールを主演に据えたハネケの名作といえばこれ。「官能」という描き尽くされたテーマを真裏からなぞってみせる、おぞましいのにゾクゾクする、まったく違うのにすごく納得できる、そんな1本。ハネケ作品を観たことがない方にも、まずはノックアウト用に、すごくおすすめです。