A Dose of Rock'n'Roll

いろんな国の映画について書いています。それから音楽、たまに本、それとヨーロッパのこと。

ドイツ映画祭2019が開催されています

ドイツ映画祭がユーロスペースで開催されているようですね!

私は行けませんが、久々に映画館で開催されることを知って嬉しくなったので書いておこうなと。

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www.goethe.de

 

 

◼︎ ドイツ映画祭について 

実は2005年に大々的に開催されたイベントに参加して感銘を受け、それ以来ファンになっています。私自身が上京したてだったのもあるんですが、個人的には映画祭の楽しさと現代のドイツ映画のすばらしさを教えてくれた思い出あるイベントなのです。それが形を変えながらも14年後の今も開催されているとは、なかなか感慨深いものがあります。
っていうか、検索してみたらなんとその年の公式サイトがまだ残っていました。すごい!

 

この映画祭の良さは、単に”私がドイツ映画好き”というのを差し引いても、行く価値のあるイベントだと思っています。理由は簡単で、出品されている作品がどれも高水準だから。若干アート系(ミニシアター系)が多いとはいうものの(でもまぁそういうのが全く苦手な人はそもそもこんなイベント行かないよね…?)、エンタメ大作やドイツ国内でファミリー向けにヒットしたものなんかも扱われているのでそんなに敷居も高くなく、バラエティに富んだ良いチョイスを毎回してくるなあ、という印象です。

というか、ゲーテ・インスティトゥート(およびジャーマン・フィルムズ)の映画輸出への情熱と選”作”眼は無視できないものがあります。先月記事を書いたタリン映画祭でも(ドイツ系の人が多いのかもしれません)わざわざ枠を設けて出品していましたが、ヨーロッパ映画賞を獲得したものを含めてどれも良作ぞろいでした。

催し物 - 東京 - Goethe-Institut Japan

 

◼︎ 今年のドイツ映画祭

さて、そんな映画祭は今年は渋谷のユーロスペースで開催ということで、これまで以上に”ふさわしい場所だな”という感があります(笑)。プログラムにざっと目を通してみましたが出品作品もなかなか良さそうです。

私が観たことのあるのはケイト・ブランシェットが1人で多種多様な人間を演じ分ける異色作『マニフェスト』だけでしたが(エンタメとは真逆ながら強烈な印象)、去年のベルリナーレで評価の高かった『ロミー・シュナイダー』、ドイツで大ヒットしたフリッツバウアーの映画『アイヒマンを追え!』のラース・クラウメ監督の最新作、『東ベルリンから来た女』でおなじみのクリスティアン・ペツォルト監督『未来を乗り換えた男』など、堅実なラインナップです。ドイツは日本と比べ物にならないほどドキュメンタリーも多く上映されており、レベルの高い作品も多いので2本のドキュメンタリーが上映されるのも見逃せません。こんな書いてても私、行けないんですけどね?(笑)

 

うーむ、これほんと東京にいたら今週末朝から晩までユーロスペースだったんだけどなあ……。たった1週間の上映ですが、興味があれば、是非。

 

 

 

◼︎ ドイツ映画祭ーこれまでのまとめ

こんなこと誰もまとめてないと思うので、なんとなくサマリーをつくってみました(笑)。

 

  • 2005年〜2008年 05年が”日本におけるドイツ年”というドイツ関連イベントをたくさん開催する時期だったことをきっかけに開催された映画祭。最初が好評だったためか有楽町の朝日ホールで3年連続、毎年20本以上というなかなかの規模のイベントでした。
    (ちなみに2005年以外のサイトも残ってました→ 2006年 2007年
  • 2008年、2009年 08年からは新宿のバルト9に拠点を移しての開催。場所は便利になってシネコン上映だったので一般的な観客にも身近になったんですが、新作の本数がぐっと減ったことが残念。まぁ、毎年20本以上って並大抵じゃないから当然といえば当然かとは思いますが…(基本コンプリートしようとしていた私にはハードルが下がりました…笑)
    本数分薄くなってしましましたが、それでもパンフレットが販売されていたのが嬉しいですね。
    それにしても05〜07の3年分のパンフの充実ぶり。↓↓ これだけ現代のドイツ映画だけを集中的に扱った資料ってないので、未だにかなり貴重なものだと思っています。

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  • 2010年、2011年 実は、この2年間だけが不明で、少なくとも映画館での上映はなくなってしまいました。個人的に仕事がものすごく忙しかったのもあってあまりゲーテの情報をチェックしている余裕もなく……。なんか気持ち悪いのでご記憶の方がいれば教えてください!
  • 2012〜2015年 この4年間は赤坂のドイツ文化会館(ゲーテの語学講座とかやってるところです)で毎年4本程度、3〜4日にかけて開催されたようです。私は2013年からドイツに来てしまったので2012年だけ参加。どの作品もレベル高く、料金が安いので2000円程度でとても充実した休日を過ごせたことを覚えています(笑)。
  • 2016年 この年は久しぶりに劇場@六本木のTOHOシネマズで開催。本数はちょっとだけ増えて7本。先に挙げた『アイヒマンを追え!』や桃井かおり出演の『フクシマ・モナムール』、『24週間 決断の時』など、ヒット作が多いですね。やっぱり劇場でやると露出が多くなるから、あとで参照するにも便利ですね(笑)。
  • 2017年、2018年 2018年は革命の年として知られる「1968」に焦点を当てたイベントを開催しており、映画の上映もその一環として行われたようです。そして、不思議なことに2017年についての情報も調べられませんでした…なかったのかもしれません。。(ゲーテのサイト、昔は過去イベント情報も残ってたのですがいつからか検索できなくなってしまったようです)

 

◼︎ ドイツ映画祭で上映されたオススメ作品

さて、最後に何本かこの映画祭で上映されて来たものの中から、個人的に思い入れのあるものを挙げておきます。

 (それぞれ05年、06年に上映) 『素粒子』はミシェル・ウエルベックの小説もとんでもない名作なのですが、この監督のことを2005年の映画祭で知り、両作品はDVDも入手して繰り返し観た結果、最後には大学の卒業論文のテーマにしました(笑)。何があっても現実と相対しなければならない大人たちにとっての「家族」、そして人間が最終的には愛に救済されることをおとぎ話にせずに真摯に描くところが、私がこの監督が大好きな所以です。後者に出てるマルティナ・ゲデックは最近あまり見ませんが2000年代のドイツ映画の”顔”の1人で、たくさんの傑作に出演しています。

(07年上映) ダニエル・ブリュールはもちろん、ユルゲン・フォーゲルもドイツではスターの1人でたくさんの映画で見かけるんですが、どうも日本での知名度がイマイチ。本作もなんでDVD出ないのか不思議に思い続けて、すでに10年以上が経過しました(笑)。

(07年上映) すでに紹介したクリスティアン・ペツォルト監督作品で、ロードショーにはならなかったのですが、私は本作が一番好き。緊張感のあるサスペンスながら、どこか主体性なく幽霊のように漂う女性、イェラの存在感が忘れられず、ゲーテでの上映に何度か通いました。

(08年上映) 日本通として知られるドリス・デリエ監督による『東京物語』へのオマージュ。わかりやすいぐらい踏襲されているものの、そこにブトー(暗黒舞踏)を挿入して見せたのは見事。小津安二郎同様に家族や生死に対する暖かさが底にはあって、何度も鑑賞したい作品だ。入月絢さんの舞踏がとにかく印象的なのですが、今でも日本語のWikiないのですね…。ちなみに驚くべきことに続編が今年公開されます。

(09年上映) 今や押しも押されぬドイツを代表する映画監督になったファティ・アキン氏ですが、私が一番好きなのは堅苦しさを一切排した楽しい楽しいこの作品。歌って踊りながらも案外移民への視点が忘れられていないのがさすが監督。

(09年上映) 日本人監督、宮山麻里枝氏による繊細な家族のドラマ。日本とドイツという2つの国が交錯しながら2組の家族が失ったピースを1人の女性が取り戻していく。悲しいけれどとても美しい映画で今でも家にあるDVDを取り出すことがあります。期待していたのですが、結局長編デビューの本作以後は聞くことがなくなり、とても残念。

(15年上映) 私が2010年代の暫定ベストフィルムにしている本作。ワンカットを撮りきるカメラの気迫。たった2時間と少しで人生が変わってしまうというお話の面白さと、たった140分の中で驚くほど表情を変えながら観客を捉えて離さない演出のうまさ、そして主人公の熱演。すべてが圧倒的。

(16年上映) 数あるアイヒマンものの中でももっとも力強い作品といえるかもしれません。法廷で闘う男の様子は、派手さはないけれど史実であるからこその説得力があり、それを十二分に体現したブルクハルト・クラウスナーの演技は一見の価値あり。

(16年上映) ふたたびのドリエ監督作で、またも日本が舞台。今回は震災後の福島。桃井かおり主演の外国映画という話題性の割には、やはりあまりにセンシティブな話題すぎるからか、日本では全然上映されていません。

 

 

知らん間に驚くほど長い投稿になっていました(笑)。こういうおすすめドイツ映画の話、もっと書いていきたいなあ、と思っています。