A Dose of Rock'n'Roll

いろんな国の映画について書いています。それから音楽、たまに本、それとヨーロッパのこと。

ハングマン(2015)

いやほんと驚いたんですが、もう最後に更新してから2ヶ月近く経っていました。気づいてはいたもののちょっといろいろ事情が・・・(サボってただけです)
 
そんな久しぶりの更新でこんな非人道的な映画を紹介するのもちょっと気が引けるんですが、最近観たものから紹介します。
 
原題: Hangman
制作: 2015年 アメリカ
監督: アダム・メイソン
出演: ジェレミー・シスト、ケイト・アシュフィールド
 

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あらすじ ・・・ 幸せなそうな家族が旅行から帰ってきたら家が荒らされていた。空港に停めた車のナビから自宅を割り出されたのだ。警察を呼ぶも、犯人は見つからず徐々に普段の生活に戻る一家。男が家にまだ潜んでいることも知らずに…。男の動機は一切明かされないままエスカレートしていく行動が淡々とカメラに写される・・・。
 

 

総合オススメ度 ・・・ ★★★☆☆

手軽に気味悪い度 ・・ ★☆

 

POVもののホラーが増えたのはいつのころからですかね?好きなんだけど『食人族』を引き合いに出すのはやめるとして、まぁ定説の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』か。
 
今回のハングマンは『ブレアウィッチ』とはちょっと違って、家の中の複数の盗撮映像とたまに犯人の手持ちをつなぎあわせた編集。徹底してPOVというわけではなく、結構劇進行のための作為も見られるんですが、それほど気になりませんでした。
その点、”こういうホラー”の再ブームを巻き起こした『パラノーマル・アクティヴィティ』の方がPOV手法は徹底してるんですが、本作はモチーフがまた違ってて楽しめました。(あえてパラノの焼き直しって言うとつまんないのでやめます)
 
そのモチーフとは、ストーカー
『パラノーマル』が霊的なものにおびえる夫婦を写し続けて怖い作品なら、こちらは真逆
最初に家を荒らされてショックを受けるものの、その後は”ちょっと変わったこと”を不審に思いながらも普通に生活を続ける家族。マスクをかぶった犯人がすぐそこをうろついているにも拘らずまったく気づくことができないでいる・・・。
 
いやこれ、予想外に怖いです。霊とかじゃなくて、現実の人間がやってることなので。まぁ、不法侵入されたにも拘らず結局対策は「銃を買っただけ」という間抜けさで(それは対症療法だよ?と言ってあげたい…)、色んなことに鈍感すぎぃ!というB級ホラー定番のツッコミを入れてしまう家族ではあるんです。
、多分ここで写されてること、不法侵入がなかったら案外気づかないんじゃないか?と思いました。自宅に家族以外の人間は「いないはず」として生活してるのが普通なので、なかなかこのバイアスから抜け出すのはキツいよねー、というそういう怖さです。
 
いや、怖いじゃなく、気持ち悪いって表現がぴったり。実際犯人がxxしたジュースを飲んじゃうシーンとか肌が粟立ちましたね。。。
 
 

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こちらは肌が粟立つ選手権優勝候補の羅将ハンさま。
(※ 本編とは何の関係もありません)
 
要は「知らない人があんなことやこんなことしちゃってるのに気づかず普通に暮らしてる」という違和感が80分続くといういいホラーでした。
冒頭では1家族、本編で1家族、そしてラストシーンでは次のターゲットを定めるところが描かれているんですが、犯人は何をしたいの?何が目的なの?というところは全く触れられません。これもホラーとしては、プラスですね。
(え、分からないのがいいってよくわかんないって…?…いや、最後出てきて「俺はお前のことが・・・」とか動機を火サスみたいに語られたら雰囲気台無しでしょ?)
 
映画としてすごいレベルが高い、というわけではないんですが、短いし気軽にホラーが観たいなーって日にはおすすめの作品です。
 
 
 
 
 
え、そんな日ないって・・・?
 
 
 
 
 
気軽にホラーが観たいなーって日には、おすすめです!
 
 
 
 
◆ ついでながら今日出てきたPOVもののホラー、有名どころを。 ◆
 
  • 特にこのジャケがやたら有名になったあれ。実は個人的にはそんな怖くなかったんですが…。ていうかこれがもう17年も前の作品ということに驚き。
 
  • 案外王道心霊もの。でもテクノロジーの進歩で昔より”気軽に撮れるようになった”ビデオを徹底して目線に使っているところが◎。”キャリー”的なオチは大好き。あ、私は続編は全部観てません(笑)。
  • スペインのホラーってなんか他と違う雰囲気があって好き。ゴシック狙ってないのになぜかほんのりゴシックというか…。こちらも根源を悪魔的なものと結びつけているところがビデオカメラとのギャップを生んで、すごいいいと思ってます。
 
  • この手の話題で必ず出てくる元祖。本家。続編(っぽい邦題の作品含めて)はともかく、本作は内容としては意外と真面目な(そして今見るとその価値観がそもそも”その当時”っぽい)文明批評作。有名な自転車のサドルシーンあたりにちらほらある程度で他には直接的なグロ表現は少なめ(今の感覚ですが)。むしろ主人公たちの行動そのものの方がよほどグロテスク、というその真面目さが主に、大好きです。