Happy End (2017)
気がついたら2ヶ月も経ってました。いやはや…今年ももう終わりですね。そんな中、カンヌでパルムドールを受賞した『アムール』より5年ぶりのミヒャエル・ハネケ監督の新作を観てきました!日本ではいつやるんでしょうか。
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マザー!(2017)
ダーレン・アロノフスキーの新作、『マザー!』、相当タフだった……。かなり映画愛の強いひとでない限り安易に観にいくことはおススメできません。。
↓↓↓ ネタバレ、もなんですが、ネガティブな評価をしてるので好きだった人は読まないほうがいいかも…。 ↓↓↓
続きを読むオンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(2013)
気づいたら7月一本も書いてませんでした…。いや、書こうとしてたんですがどうもレビューの方向性に疑問が出てきて書きあぐねていました。まぁ今回はいつもの調子でいくんですが。
そんな感じでもう一本、ジャームッシュの近作を取り上げます。前回と順序が逆ですが、2013年の作品。実は長いことノーマークで最近観たのです。
オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ : 作品情報 - 映画.com
過去10年にジム・ジャームッシュ監督は『リミッツ・オヴ・コントロール』(2009)、本作(2013)、そして前回紹介した『パターソン』(2016)という3作の劇映画をとっているのですが、私はこの『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』が一番お話としてわかりやすい、と思いました。
どんな感じかというと
- デトロイトとモロッコのタンジェ(タンジール)という超長距離恋愛をするアダムとイヴのふたりのヴァンパイアのお話。
- 長距離恋愛と書いたけどこのふたりはもう何世紀にも渡って夫婦。
- ”上物”(汚染されていない)血を飲むことを無常の喜びとしながら(吸血鬼なので)ふたりとも芸術を愛して生きている。
- ある日気が滅入って死を意識した発言をしたアダムを見かねてイヴがデトロイトにやってくる。
- 夫婦水入らずで久々のときを過ごそうとした矢先、トラブルメーカーである妹のエヴァが押しかけてきて…。
という感じです。
ポイントとしては、
◆ 万人向けのシンプルなストーリー
吸血鬼を題材にしてゴシックなテイストをたたえながらも、愛し合うふたりの身に起こるお話はすごくシンプル。起承転結のある、王道の映画といっていいでしょう(きち〜んと落としてるエンディングも大好き!)。
特にアダムの口から語られる”ゾンビ”たち(人間のこと)の話に着目してみると、異形のものの視点を借りて人間社会のおかしさや消費文明の虚しさを痛烈に批判した作品、ともとれますが、私はそういう風に見ませんでした。もちろん監督の視点にそういった批判精神が含まれていることは確かですが、それは今回のメインではなく味付けに過ぎず、あくまで「アダムとイヴによるラブストーリー」として楽しんでいいのかなと思います。
いづれにしても、大げさな表現は使わず淡々と物語が進行していく様は見方によってはちょっと退屈かもしれませんが、それを差し引いてもなお万人向けの映画に仕上がっていると私は思いました。
◆ アダムが超かっこいい
ある意味この映画のゴシックな雰囲気を一身に背負っていると言ってもいいのが、トム・ヒドルストン演じるアダム。これが!ものすごいはまり役だと思いました。長髪で常に黒装束、そしてディストーションとディレイのかかったギターでダウナーなリフを奏でる………いやこれ全然ヴァンパイヤちゃうやん!というツッコミもあるんですけど、とにかくロック好きにはたまらない魅力をアダムは放ってます。グランジなのか微妙ですけど彼の書いた曲と(これはグランジじゃないんですけど)かける曲も最高でした。ジャームッシュ監督のセンス、さすが!
◆ いちいち細かい設定が楽しい
いきなりヴァンパイヤと関係ない魅力を挙げてしまいましたが、それでも”ヴァンパイヤ映画でなさそうで、でもやっぱそう”な映画なのは、細部までこだわってきっちり世界観を作っているから。そういう意味でなかなか奥行きのある作品なんですが、とりあえず大好きな人はこういう細かいギミック、大好きだと思います(私は大好き派)。
- 永遠に生きるため自作を発表していないアダム。昔書いたものはショパンとか、著名な「友人」たちが自分のものとして世に出しているということに。
- ”誰にも知られてはならない”アダムのアパートの電気はすべてニコラ・テスラが開発したエコエネルギーによってまかなわれている。
- 触れたら楽器の歴史を読み取るイヴの能力。
- 2人の友人であるおじいさん(ジョン・ハート)は、イギリスの伝説の作家、クリストファー・マーロウ。その生涯に謎も多い人物ですが、実際にはヴァンパイヤになってました、という設定。
◆ エヴァが小悪魔すぎてつらい
それから!特筆すべきぐらいミア・ワシコウスカがかわいすぎ。いや、まさに小悪魔(ヴァンパイヤなんだけどね)。これでもかーって勢いでめんどくさい女子キャラを嬉々として演じてるんですが、彼女が登場している間だけは場違いなキュートさがアダム&イブのふたりとずれてて(最後まで噛み合わない)おかしさも倍増しています。
Only Lovers Left Alive- Adam is NOT Taking You Out (Tom Hiddleston and Mia Wasikowska) - YouTube
ひとりだけなんかずれてる。
ちなみに彼女の出演作では、これが一番好き。考えてみるともともとはゴシックなテイストが似合う人でした。
といったところ。
そんな本作、ドイツのNRW Filmstiftungが出資して作られた作品なのでエンドロールにドイツ人の名前がたくさん出て興味深かったです。(NRWはノルトライン・ヴェストファーレン州のことで、私が住むデュッセルドルフに本部を置く映画・メディア財団。有名な作品にもかなり携わっているのでこのロゴマークをエンドロールで見たことがある人もいるかもしれません)
パターソン(2016)
前回はジャームッシュのドキュメンタリーについて書いたので、今回はジャームッシュ監督最新作を。こちらは日本では8月26日から公開のようです。
あらすじ: 詩をこよなく愛する”パターソン市の”バスドライバー、パターソンのお話。朝起きて仕事におもむき、同僚の愚痴を聞いて弁当を食べ、家ではちょっと風変わりな妻が待っていて愛犬の散歩に出かけたら一杯ひっかけて帰宅する。そんな全く変わることのない日常の中でも、奇妙な偶然を発見したり街の人々の会話に耳を傾けながらパターソンは毎日詩を書き溜めることが楽しみだ。長く妻に進められていた詩集の出版を彼はある日、ついに決断するが……。
***
始まってしばらくはセリフも多めで監督作としては”意外とポップだな”という印象だったものの、最後まで見るとさにあらず。すごく奥の深い映画だとわかる。バスドライバーの日常を淡々と描く本作は、一見ちょっと退屈だけど終わってみると溢れる詩情に胸が満たされている、そんな暖かい作品だった。日常の何気ないことを題材にして詩をつづる。つまり、ジャームッシュ監督が考える「詩とは何か」であって、彼自身の芸術感を表明した作品だと言えるかもしれない。そうした芸術への憧憬をことさらひとつの街にこだわって、その中にユニークな人物を配置して生き生きと語らせていく。ジャームッシュ監督の真骨頂なのではないか。
とにかく見所としては「詩」。ウィリアム・カルロス・ウィリアムズをこよなく愛するパターソンがパターソンで(これは彼の有名な、同市で書かれた詩集のタイトルでもある)詩を書く。って、よく考えるとこれでもかってぐらい単純なオマージュなんだけど、だからこその妙な明るさが気持ちがいい。そしてそもそもオマージュに足るだけの詩の良さ。スクリーンで詩を味わうって、ありそうでなかなかない体験なのでは。
ちなみにもちろん物語はあって、それはそれで面白いのでご期待を。個人的に『リミッツ・オブ・コントロール』はすごく難解に感じたんだけど、今回はそんなことなく。もう一度見たらまた発見がありそうで(繰り返し出てくる双子のモチーフについて深掘りしたいな)それでいて1回目でも十分満足できる作品でした。
最後に俳優陣を。
超個人的に2015年末にカイロ・レンを演じたことで勝手に地に落ちたアダム・ドライヴァーを見直させてくれる機会になりました(笑)。カイロ・レンを憎むあまりアダム・ドライヴァーまで嫌いになっていた私……いや本当この映画見てよかった(笑)。風変わりな人物に囲まれて怪訝な顔を連発するパターソン、最高でした。そしてこうしたインディーズ風味にもよく合うひとなんだな、と確認。だがカイロ・レンは許さないぞ
Adam Driver Was A Marine And Went To Juilliard Before Fame - Business Insider
(ハンソロ感ある…だと…!?)
それから白黒が大好きできまぐれな奥さんの愛らしさといったら……!(そしてそれにいらついたりせずに優しく見守るパターソンとの関係、なんてハッピーな家庭なんだろう、と)
ゴルシフテ・ファラハ二さん。あれ、このひと誰だったかな〜と思っていたら、アスガル・ファルハーディー監督のベルリン銀熊受賞作『彼女が消えた浜辺』に出ていたイランの女優さんでした。今回は溌剌とした演技で画面いっぱいに魅力をふりまいています。
Critics Corner: ABOUT ELLY | EatDrinkFilms.com
『彼女が消えた浜辺』にて。これは名作なのでぜひ!
それにしても、英語うまいですよね。Wikipediaによれば現在はパリ在住とのこと。それからカップケーキ、食べたくなりました(笑)
(監督と)
それからすばらしい助演をしてくれたのが犬のネリー(役名はマーヴィン)。いやもう、彼がいないとこの映画は成り立ちませんでした。パルム・ドッグ万歳!
それからもちろん、永瀬正敏!!まさかここで出てくるとは………。いやもうめちゃくちゃいい役どころです。日本のみなさんはぜひ期待していてください(笑)
ギミー・デンジャー(2017)
書こう書こうと思って時間が経ってしまいましたが、日本では9月に公開されるストゥージズの新しいドキュメンタリーを観に行ってきました!
※ ごめんなさい!筆者はイギーポップやストゥージズの大ファンでもなんでもありません。勝手なこと書き綴ってますけど、「んなこた100年前から」「予習ぐらいしろ」「おとといこい」的なアレはご勘弁を…!あと多分ジャームッシュ監督の大ファンというわけでもありません…!(苦笑)
。。。
突然こわくなったので最初に謝っておいたのですが、そう、新しいドキュメンタリー。自身がイギーと親友のジム・ジャームッシュが監督してるんですね。行く前には勝手に最高にハッピーでロードムーヴィー風な「ここに見参!ジャームッシュ@元祖パンク野郎ども」みたいな100分を想像してたんですが、いやいやいや、全然。演奏シーンよりも関係者の証言を中心とした実に真面目なドキュメンタリー作品でした。
イギーもちょっと上半身裸なぐらいで結構ゴキゲンに、饒舌に当時のことを語ってくれています。これもやっぱり監督=親友効果なのか、イギーが常にイイ顔なんですよね。
そうした真面目な作風からうかがえたのは、イギー&ストゥージズがやってきたことへの並々ならぬリスペクト。私が個人的に「あぁ…そうなんだよなあ」とうなずいたのは始まりが60年代なかばというところ(デビューが1967年)。ダムドの10年前!ストーンズはサタニックマジェスティーズ!(あえてこれを出すが) そうした彼らの偉大さに真摯に迫った良作と言えますね。
ちなみにそのころのストーンズさん(1968年だけど)。
そう、時代的なことで言えば、同時代の”流行り”を無視していることが、私としてはすごく面白く感じました。つまり、イギリス勢が全然眼中にないところ。具体的に名前が上がったのはザ・フーぐらいでビートルズだストーンズだという話は皆無(ジョーコッカーが一瞬出てきたけど音楽的影響とは違う文脈)。それを意識して流行から離れていった、ということではなくて(イギーのキャリアの最初のバンドは明らかにそういうビート系のバンドだった)、あくまで「え?いや別に。俺たちデトロイト出身だし」という自然体でやってるのが…イイネ!
無視、と言ったものの、はっきりと「くせえ」と言われていたのはフラワームーヴメント。CS&Nが例として登場したんですが(まぁ確かに真逆のスタイルだわな)、私が苦手なバンドなので「うんうん、そうそう!」って妙にスカッとしました(笑)。
ていうかこれどんだけいい写真なんだって感じじゃないですか?
同時代的な流行に乗っかってなかった、というのと同じく面白かったのが、イギーの音楽的なルーツ。トレーラーハウスでドラムを撃ち鳴らすところから出発してるのも奇抜だけど、それ以上に割と甘めのポピュラー音楽が含まれていることは興味深かったです。それから、ジャズにまで目をやりながら音楽をつくっていたというのにも驚きました。
そんな感じで書いてるとどうも辛気臭い映画っぽくなってしまいますが、ロッカーらしい”伝説”エピソードとかはしっかり出てきて、要所要所で笑わせてくれます。最初のバンドでの「目立ちたくて」あほみたいな高台組んでドラム演奏した写真とか、一番最高だったのは大麻乾燥のくだり。爆笑必死です。正直このシーン、ハイライトのひとつだと思うので、これから観る方はぜひ楽しみにしててくださいね!(笑)
というわけで、最後はきちんとこの最高のリフでお別れです。
画像出典: NTS Presents Gimme Danger | Institute of Contemporary Arts
GIMME DANGER - Photocall - EV - Cannes 2016 - YouTube
Gimme Danger - The Three Tomatoes
ultratop.be - The Rolling Stones - Jumpin' Jack Flash
ホリーズ・オーバーハウゼン公演2017!
なんだか一年前と同じネタばかり投稿している気がするんですが…先日またもホリーズのライブに行ってきました!
オーバーハウゼン行きすぎじゃね?って気がしますが(笑)、場所は去年The Whoを見たケーニッヒピルスナーアリーナです。
(ちなみに去年はじめてホリーズを拝めてむせび泣いた話はこちら↓↓)
(ちょっと長めです)
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